しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「自由とはなにか」を考える

NHKテレビテキスト、100分de名著「安部公房砂の女」を読了し、

同時にテレビ番組の視聴も終えました。

テキストの執筆者で番組の指南役は、漫画家で文筆家のヤマザキマリさんでした。


テキストでヤマザキさんは、次のようなことを述べられています。

『‥‥それ(自由)は、安部公房作品の一貫したテーマです。

 私たちは自由という言葉に対して、日々抱えている不満から脱却できるかのような、

 ご都合主義的な解釈をしがちですが、「砂の女」は、自由という意味を、

 距離感を持って捉え直すきっかけを与えてくれます。人生における絶対的解決策に見える自由という言葉は、

 あらゆる欲求に囚われた我々の業による呪縛と言えるのかもしれません。

 人生経験を積み、さまざまな失意や絶望を味わってから本書を改めて読んでみると、

 また違った感慨深さが芽生えます。

 私も、若いときにこの小説を読んだ印象と、この年齢になってから読む印象とでは、

 ずいぶん違っていることを今回実感しました。』


娘が我が家に残していった「砂の女」の文庫本を書棚に見つけて、私が初めてこの小説を読んだのは、

比較的最近のことでした。

ですから、テキストもテレビ番組にも、すんなりと入っていけたのですが、

番組でのヤマザキさんの鋭いご指摘や、伊集院さんとの示唆に富むトークによって、

それまで気が付かなかった「視点」を発見できたような気がして、とても勉強になりました。


100回を超えるこの番組のなかでも、今回の番組は、間違いなく5本の指に入ると思います。

ヤマザキさんの解説はもちろんのこと、

俳優の町田啓太さんの朗読と高橋昂也さんのアニメーションも素晴らしかったです‥‥。