時々晴れて、時々雷が鳴って、時々雨が降って‥‥。
今日は変なというか、不安定な天気でした。
さて、町立図書館で借りてきた『物語 ウクライナの歴史~ヨーロッパ最後の大国』
(黒川祐次著:中公新書)を読了しました。
本書には、印象に残る記述が三箇所ありました。
まず一つ目は、「ウクライナ人は中・東欧の他の民族よりも長く独立のために戦い、
しかも多くの犠牲を払いながらも結局独立が失敗したのはなぜか」についての記述です。
ウクライナ系カナダ人の史家スプテルニー教授の説とされる、
国内要因としては、ツァーリ政府の下で民族主義が抑圧されていたこと、
国外要因としては、ポーランドやロシアのボルシェビキなどの力に圧倒されたこと、を紹介したうえで、
著者はそれに加えて、ウクライナはロシアのレーニンなどのように
傑出した指導者(リーダー)を生み出せなかったこと、
ウクライナ自身がもつ重要性、具体的には、ロシアはウクライナを面積・人口の面からも、
工業・農業の面からもそれなしではやっていけない不可欠の一部と考えており、
いかなる犠牲を払ってもウクライナをロシアの枠内にとどめておくとの固い決意があったこと、を指摘され、
その点がフィンランドやバルト地域とは違っていた、と述べられていました。
「豊かな土地を持つことの悲劇」という表現がとても分かりやすかったです。
二つ目は、ウクライナの重要性と将来性についての記述です。
第一に、ウクライナは大国になり得る潜在力があるとのことでした。
具体的には、ヨーロッパでロシアに次ぐ第二位の面積、フランスに匹敵する5000万人の人口、
ヨーロッパ最大規模の鉄鉱石の産地、農業国フランスの二倍の耕地面積、
水準は高く層も厚い工業地帯を支える科学者・技術者、教育水準が高い国民、堅実で忍耐強い国民性などです。
第二は地政学的な重要性です。
ウクライナは西欧世界とロシア、アジアを結ぶ通路であり、クライナが独立を維持して安定することは、
ヨーロッパ、ひいては世界の平和と安定にとり重要とのことでした。
最後に、日本とウクライナの共通点についての記述です。著者は次のように述べられていました。
『‥‥お互いに古い歴史と文化をもち、それを大切に守ってきたこと、
とくにコサックと侍は勇気、名誉、潔さなどの共通の価値観をもっており、
これが現代にも受け継がれていること、両国とも農業を基礎とした社会であったこと、
両国とも石油・天然ガス資源に恵まれていないこと、しかし教育には熱心で教育水準が高いこと、
両国が世界で核の悲劇の直接の被害者であったこと、お互いに共通の隣人があり、問題を抱えていること、
などがある。‥‥』
「問題を抱えている、お互いに共通の隣人」とは、ロシアのことでしょうね‥‥。
本書を読んで、さらにウクライナという国に親近感を抱くようになりました。
そうそう、忘れていました。
本書の「まえがき」では、ウクライナ史の最大のテーマは「国がなかったこと」、
すなわち、多くの国においいては歴史の最大のテーマが民族国家の獲得とその発展であるのに対し、
ウクライナでは国家の枠組なしで民族がいかに生き残ったかが歴史のメインテーマであった、
と書かれていました。こちらも強く印象に残った記述です‥‥。