「ドイツ教養小説の大作」、トーマス・マンの『魔の山 上・下』(高橋義孝訳:新潮文庫)を読了しました。
物語の主人公、ハンス・カストルプのアルプス山中にあるサナトリウム「ベルホーク」での生活が、
「時間」という概念を思慮しながら永遠に続くのではないか、そう感じながら読んでいました。
そして、この小説の中では、第六章第七節「雪」と第七章終節「霹靂(へきれき)」が
ひとつの見せ場ではないか、と思っていましたが、まさか、主人公が第一次世界大戦に従軍することで、
物語の結末を迎えるとは思いませんでした。「晴天の霹靂」のようにあっけなかったです‥。
なお、この小説には、聖書の「死者は死者として葬(ほうむ)らしめよ」、
「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返せ」とか、
ショーペンハウアーの「私たちが生きているかぎりは死は私たちにとって存在しないし、
死の来るとき私たちは存在しない、したがって私たちと死との間にはいかなる現実的な関係も成り立たない、
死は私たちにとってだいたい関係のないものであり、
せいぜい世界と自然とに関係があるといえるだけである」といった言葉が引用されています。
キリスト教や西洋哲学についての知識があれば、物語をより深く理解することができるのかもしれません。
私はこれまで、外国人作家の本格的長編小説として、ロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」、
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」、サマセットモームの「人間の絆」などを読んできました。
さて、次はどの本格的長編小説に挑戦しようかしら‥‥?