『アベノミクスは何を殺したか~日本の知性13人との闘論』(原真人著:朝日新書)を読了しました。
本書のタイトルの意味について最も端的に記述した文章が、「おわりに」で次のように書かれていました。
『20世紀に世界最速で経済大国に駆け上がった日本は、
21世紀になってゆっくりとかいだんを下りる時代を迎えていた。
人口動態からも成熟経済の実態からも、それはほぼ運命づけられた未来である。
ならば、そのための国家としての新しい行き方を考え、準備し、態勢を整えるのが賢明な政治、
まっとうな政策というものだろう。
ところがその大事な時期に、さらに経済大国の高みに無理やり駆け上がろうと
逆噴射してしまったのがアベノミクスということになる。時代錯誤の罪は大きい。
かろうじて均衡を保っているように見える日本の財政や金融政策には巨大なマグマがたまっている。
何かの拍子にそれが噴き出せば、日本経済はひとたまりもない。』
そして、13人の論客のなかで強く印象に残ったのは、
過去の金融危機で学んだ「教訓」として白川方明・日銀元総裁が語った次の言葉でした。
『危機は毎回違った顔をしてやってくる』
『将軍は一つ前の戦争を戦う』
なお、私個人としては、アベノミクスを支えた政策の一つ「異次元金融緩和」の結末と、
それが私たち国民に与える影響を、これからも注視したいと持っています‥。
どう考えても、日銀が国債残高の半分を保有し、政府の借金を支えている状態は、
異常ではないかと思っているからです。
著者が政権に批判的な朝日新聞の経済記者であることを割り引いても、とても勉強になる本でした‥‥。