町立図書館で借りてきた『城山三郎全集第八巻』(新潮社)に収録されている作品の一つです。
この作品は、杉本五郎・陸軍中佐の遺著「大義」の思想に影響を受けた主人公・柿見が、
敗戦に伴う価値観の転換や周囲の人々の変節に、煩悶・苦悩する姿を描いたもので、
思想史研究者である片山杜秀・慶応大教授が、NHKの番組100分de名著「宗教論」で、
先ほどの「大義」とともに紹介されていました。
ちなみに、「大義」に感動して海軍予科練を志願する中学生の主人公は、著者の分身と言われているそうです。
なお、本作品のなかで強く印象に残ったのは、主人公の友人・森が語った次のような内容です。
『(黙り込んだ柿見に代り、突き放すような口調で)忘れることは案外にやさしいんじゃないかな。
日本人は忘れ過ぎるぐらいに忘れる。愛情が淡い。憎しみが続かない。すぐ忘れてしまうんだ‥‥。
執念深いことこそ、これからの美徳じゃないか。』
う~む、「日本人は忘れ過ぎるぐらいに忘れる」ですか‥。日本人の「精神史」そのものですね。
著者の城山三郎さんは、私の父と同世代の「戦中派」。
「戦争に批判的な目を持つことなしに、戦争に参加した世代」とも言われています。
17歳で終戦を迎えた生前の父に、敗戦後の日本社会の様子を、もっと真剣に聞いておくべきでした‥‥。
