今日の日経新聞に掲載された
「米コロンビア大デモを考える~教養教育が培う現実感覚」という記事が大変勉強になりました。
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に反対するデモは
米コロンビア大から全米に広がりましたが、
同大大学院で客員教授を務める佐藤仁・東京大教授は、伝統的な教養教育が社会への関心を高めているとして、
次のようなことを述べられていました。
『興味深いのは、コロンビア大が、コア・カリキュラムと呼ばれる
全米で最も保守的な教養教育を維持してきた大学であることだ。
それは、アリストテレスの「ニコマコス倫理学」やマキアベリの「君主論」といった
西欧の歴史、哲学、文学から選び抜かれた古典を、すべての学生に読ませる教学体系である。』
『保守的なカリキュラムを誇るコロンビア大が
鋭い現実感覚をもった構成員による社会運動の拠点になってきたことは、
大学が知の生産拠点である以上に、社会変革の拠点にもなりうることを示している。
古典を過去の遺物としてではなく、生きた知識として教える伝統が、
学生たちに正義感と現実感覚を醸成してきたのではないか。』
そして、佐藤先生は、この米国での出来事から、日本の大学における教養教育に3つの提言をされていました。
第1は、教養の基礎になる文献講読を「生きた知識」にするため、
教材が現実社会とどのようにつながっているのかを示す教え方や取り上げ方の工夫をすること。
第2に、専門に先立つ教養科目群が現代世界の形成にどのようにつながっているのかを体得できるよう、
カリキュラムを体系化すること。
第3に、白か黒かで判定できない現実問題への対処の幅を知るために、
異なる意見をぶつけ合う少人数の議論型授業を増やすこと。
記事によると、日本財団の18歳意識調査で、日本は
「自分が国や社会を変えられると思う」と考える人の割合が他国に比べ著しく低かったそうです。
そして、「社会に関心を持ち、主体的に声を上げる若者を増やすことは民主主義の衰退防止に欠かせない。
世界を知り己の価値観を磨く教養教育の役割は重い。」と指摘していました。
そういえば、先日視聴した「NHKアカデミア」で、経済思想家の斎藤幸平さんが、
「3.5%の人が非暴力で本気で立ち上がれば社会は変わる」と力説されていました。
私はもう若くないけれど、民主主義の衰退防止のために、
社会に関心を持ち、主体的に声を上げる若者が一人でも増えればいいですね‥。
若い皆さん、大学でしっかりと「リベラルアーツ」を身につけてください。期待しています‥‥。