しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

本当に取り組むべき課題とは

少し古くなりましたが、先月28日の日経新聞電子版に、西條都夫編集委員の執筆による

『企業を蝕む「熱意なき職場」~社員の強み重視の文化を』というタイトルの、

次のような内容の記事が掲載されていました。


『次の質問に「はい」「いいえ」で答えてほしい。

 ・私は仕事をする上で、自分の最も得意なことを行う機会が毎日ある。

 ・職場で自分の意見が考慮されていると感じる。

 ・最近1週間で自分の仕事が褒められたり、認められたりしたことがある。

 ・職場に親友がいる。

 ・過去1年の間に仕事を通じて学び、成長する機会を持った。

これらの質問は米調査会社のギャラップが仕事への熱意(エンゲージメント)を

調べるために実施しているアンケートの一部だ。

「はい」が多い人や職場ほどモチベーションが高く、主体的に仕事に取り組んでいる。

逆に5つ全て「いいえ」の人は、転職を考えたほうがいいかもしれない。

こうした働く人のエンゲージメント調査は米欧で盛んだ。

結果をみると、実は日本人の仕事に対する熱意はほぼすべての調査で最下位クラス。

ギャラップ調査では「仕事に主体的に取り組む人」は全体の6%にとどまり、

世界139カ国のなかで132位だった。

米IBMが昨年発表した同種の調査でも、43カ国中42位で、

日本より劣るのはハンガリーだけだった。 ~(以下、略)~ 』


う~む‥‥。(沈黙)

日本人の仕事に対する熱意が、世界で最下位クラスとは意外でした。

それよりも、記事に書かれているギャラップ社の質問が

アンケートの「一部」というのが気になって、ネットで調べてみると、

実は全部で12の質問があって、それは「Q12(キュー・トゥエルブ)」と呼ばれているそうです。


ちなみに、残りの7つの質問は次のようなものでした。

・自分が職場で何を期待されているのか知っている。

・仕事を上手く行うために必要な材料や道具を与えられている。

・上司または職場の誰かが、自分を一人の人間として気にかけてくれている。

・職場の誰かが、自分の成長を促してくれている。

・会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる。

・職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている。

・この6か月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた。


再び、う~む‥‥。(沈黙)

定年退職後に、私の仕事に対するモチベーションがいまいち上がらない理由が、

この質問を読んで、なんとなく分かったような気がしました。

そして、さきほどの記事の続きでは、次のようなことが書かれていました。

『一方、日本は労働市場流動性が低く、社員の離職率は高くない。

 だから経営者は働き手の心のありように鈍感だが、社員が会社を辞めないことと、

 彼らが生き生きと仕事をしているかはまた別の話だ。

 むしろ一連の調査が示すように、日本人は受動的なまじめさはあっても、

 自ら積極的に仕事に向きあう姿勢に欠け、

 それが労働生産性の低さやイノベーション不足に帰結しているのではないか。

 処方箋はある。社員の意欲を最も左右するのは直属の上司との関係だ。

 部下とよく話し、彼らの「弱み」ではなく、「強み」に着目する上司がいれば、

 職場の意欲は目に見えて上がる。

 マネジャーに適切な人を選び、彼らの技量を高める工夫が企業には欠かせない。』


政府が実現を目指している「働き方改革」では、

非正規雇用の処遇改善」「賃金引上げと労働生産性向上」「長時間労働の是正」

などが課題として挙げられていますが、「本当に取り組むべき課題」は、

「実はほかのところにあるのではないか?」と、考えたくなるような記事でした。

孤独というものの本質

冬将軍がどっかりと日本列島に腰を据えて、連日、身を切るような厳しい寒さが続いています。

それはまるで、冷蔵庫のなかで生活しているような感覚です。ほんと、大袈裟ではなく‥‥。


さて、今日6日の朝日新聞一面コラム「折々のことば」は、

イタリア文学者で随筆家、須田敦子さんの

『私たちはすこしずつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒野でないことを知った』

という言葉で、いつものように鷲田清一さんの次のような解説がありました。


『教会の片隅で、司祭も信徒もなく人々が自由に集う共同体を夢見て発足した

 イタリア・ミラノの小さな書店。その消息を綴(つづ)る作家は、

 そこを行き交う人々の交友を支えたのは、別々の途(みち)を歩むそれぞれの孤独だったとふり返る。

 随想『コルシア書店の仲間たち』から。

 評論家の松山巖は文庫版の「解説」で、「孤独とは他人を全身で認め、恋うること」と、

 返歌のように記す。』


「須田敦子さんて、どこかで聞いたことのある名前だなぁ‥‥」と考えていたら、

ようやく思い出しました。

町立図書館で借りて読んだ、若松英輔さんの『生きる哲学』(文春新書)に、

その人の生きざまと思索の過程が描かれていました。

しかも、14人の「生きる哲学」を実践した方々のうち、

須田敦子さんはトップバッターで紹介されていたと思います。


それにしても、「孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒野でないことを知った」

「孤独とは他人を全身で認め、恋うること」というのは、

孤独というものの本質を示唆した、奥深い文章表見だと思いました。

もっとも、私は未だにこの境地に達したことがありません‥‥。

それはおそらく、本当の意味での「哲学的な思索」をしたことがないからだと思います。

図書館の本は共通財産

私は本来、本は身銭を切って購入し、

読みたいときにはいつでも読めるように手許に置いておきたいタイプの人間ですが、

定年退職後は自由に使えるお小遣いが少なくなったこともあり、

最近は、町立図書館で本を借りて読むことが多くなりました。


その公立図書館について、今日5日の日経新聞電子版に、

『「本が帰ってこない」悩む公立図書館』というタイトルの記事が掲載されていて、

冒頭、次のようなことが書かれていました。

『貸し出した本が戻ってこない「未返却本」への対応に公立図書館が頭を悩ませている。

 督促はがきを送る費用や手間もばかにならず、東京都足立区は17年度までの2年間で、

 約2万冊分の返却を断念した。公立図書館は延滞料を科すこともできず、モラル頼みなのが現状だ。』


記事によると、図書が返却されない理由は様々で、

返し忘れや返したつもりになっていたケースが大半だそうですが、

入院や急な転居で連絡がとれなくなる人もいるとのことでした。

米国では多くの図書館が1日当たり一冊1ドル未満の延滞料を徴収していて、

未返却が問題になることはないそうですが、日本では、図書館法で

「入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価も徴収してはならない」と規定していて、

延滞料制度の導入は難しいとのことでした。


う~む‥‥、そうでしたか。

私が普段利用する町立図書館にも、「未返却本の存在」という、やっかいな悩みがあるのでしょうね。

記事が指摘していたように、「公立図書館の本は共有財産」という意識を一人一人が持つことが、

この問題の一番の解決策だと思いました。

なんといっても、公立図書館は私たちにとって、大切な「知的宝庫」ですから‥‥。

立春の日の雑感

『漫画 君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著、羽賀翔一イラスト:マガジンハウス)

を読了しました。妻が友達から借りてきた本で、明日には返却するとのことだったので、

昨日と今日の二日間で一気に読み終えることにしました。


漫画とはいいながら文章が盛りだくさんで、結構読み応えがあり、

また、その内容も、さすがベストセラーになるだけあって、とても奥深いものがありました。

次は、積読状態である岩波文庫の原作を読むことにします。

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか


さて、今日は新しい洗濯機が届きました。

10年以上使ったドラム式の洗濯機の脱水機能がおかしくなり、

途中、何回も運転が止まることがあったので、思い切って買い替えることにしました。

不思議なもので、退職してお金の余裕がなくなってから、電化製品が次々と故障していきます。

次は、冷蔵庫と電子レンジ、そして、和室のエアコンを買い替える必要がありそうです。(トホホ)


ところで、今日は二十四節気の「立春」です。

暦の上ではこの日からは春だというのに、日本列島は寒気に覆われて、

こちら愛媛も、今日一日とても厳しい寒さとなりました。

やさしい南風に包まれる日を、ほとんど祈るような気持で待っている、そんな今の心境です。

歴史に謙虚に学ぶことの大切さ

『歴史の愉しみ方~忍者・合戦・幕末史に学ぶ』(磯田道史著:中公新書)を読了しました。

印象に残った記述のいくつかを、タイトルを含めて次のとおり書き残しておきます。


・「司馬さんに会えたらという反実仮想」から

 わたくしは、怒りをおぼえる。電力会社の幹部や原発の権威者に、ではない。

 平成の今になって、わたしたちが目にしたのは、「立派な現場・駄目な指揮・とんでもない兵站

 であり、「想定は外・情報は内」という、あいも変わらぬ、この国の姿であった。

 「これこそが司馬さんが生涯かけて、筆の力で、日本人に更改をせまったものではなかったか。

 昭和のあの戦争の失敗の時から、われわれはなんにも変わっちゃいないんじゃないか」。

 そういう持って行き場のない憤りが、心中に、ふつふつと沸いてきた。


・「日本人の習性は江戸時代に」から

 19世紀の日本人の強みは「世の中は変わる。人智と機械は進歩する」と信じ

 「過去にとらわれず自らを変える」のに躊躇しなかったことである。

 当時、これを「変通」といった。変化に通ずるという意味である。秋山真之などは変通の典型。

 ~(略)~ 日本人の習性、その強みや弱みはすでに江戸時代に形成されているものが多い。

 この国の改革には、まずはその習性を知らねばならぬ気がする。


・「この国の経理の歴史」から

 時代は変わっても経理の目的は一つだ。「ものごとを見えるようにすること」。

 これにつきる。計算と資料作成をいくら緻密に行っても、この目的を見失った経理は意味がない。

 どれくらい食べ物があるかを必死に計算した縄文人の気持ちこそ、経理の原点かもしれない。


・「心の丈夫なる馬を用ゆべし」から

 疾風に勁草を知るという言葉があるが、人間でもなんでも危機のとき、その真価がみえるものだ。

 強風がふくと、たいていの草は弱々しくなびくが、

 そのなかに数本、ピンと立っている勁(つよ)い草がみえる。

 大事が起きたとき、めまいを起こして現場で指揮をとれなくなる学歴エリートの指導者は、

 あまりにも特化されたイチゴのような人かもしれない。

 平時にはよかろうが、異常時にはむかない。


・「津波と新幹線」から

 寺田寅彦は「津波と人間」で、こうものべている。「しかし、少数の学者や自分のような苦労症の

 人間がいくら骨を折って警告を与えてみたところで、国民一般も政府の当局者も決して問題にはし

 ない、というのが、一つの事実であり、これが人間界の自然方則であるように見える」。

 この時代よりは人間は進歩していると信じたい。苦労症の歴史学者は、ほんとうに心配している。


ふぅ~、疲れました。もっともっと書き残しておきたい記述があるのですが、これくらいで‥‥。

著者は、この本の「まえがき」で、

『歴史は魅力的であると同時に、人命さえ救いうる有用性をもっている。

 本書を最後まで読んでいただきたい。きっとあなたの身の安全にも役立つはずである。』

と述べられていました。

その言葉のとおり、歴史に謙虚に学ぶことの大切さを教えてくれる、貴重な一冊だと思います。

歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)

歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)