しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

内なるカオス

久しぶりに新聞記事からの引用です。

新年4日から、日経新聞「経済教室」では、
「2013 混沌(カオス)を超えて」の連載が始まりました。
7日(月)の第2回は、
藤本隆宏東京大学教授の『「強い生産現場」再評価の時』でした。

藤本教授は、
昨今のカオス的な日本産業談義の一典型が
「全製造業空洞化論」や「ものづくり衰退論」とされたうえで、
経済不安・円高・天災で人々の気分がめいるのは仕方がないが、
気分で産業を論じては困るとして、次のように述べられています。
『一産業の衰退、一企業の不振、一国経済の不況をもって、
 ものづくり全般の衰退を論じるのは短絡的、後追い的であり、
 現場と産業・企業・経済を混同している。
 ものづくりは現場の現象であることを忘れてはいけない。』

そして、「現場の戦後史」を概観された後、
ポスト「冷戦後」は、新興国の賃金高騰で潮目は変わりつつあるとして、
論評の最後を、次のように締めくくられています。
『つまり、国内の優良現場は「夜明け前」の状態とみるのが自然だ。
 潮目は変わりつつある。
 しかし現場をよく見ない本社が、夜明け前の闇を永続的な闇と見誤り、
 国内工場の閉鎖命令を乱発すれば、それこそが自滅的な産業空洞化を招く。
 今は意思決定者が内なるカオスを克服し、現場現物の原点に立ち返り、
 正しい長期判断をすべき時である。』

う〜ん、なるほど。
「内なるカオスの克服」と「現場現物の原点に立ち返ること」が大切なのですね。
この真理は、製造業の生産現場だけでなく、
全ての組織についても当てはまるような気がします。

そうそう、そういえば、同じ論評の中で、
藤本教授は、次のような名言も残されています。
『一国の経済は産業の集まり、産業は現場の集まりなので、
 正確な経済産業分析には現場確認が不可欠だ。
 産業の全体像は経済学なしには分からないが、
 産業の微細な動態は経済学だけでは分からない。』

頭でっかちで内なるカオスに陥らないよう、
「現場現物」をよく見る姿勢を貫きたいものです。