日経新聞「経済教室」で連載されていた
「安倍政権 経済政策の課題」の第4回(最終回)は、「公共投資より雇用対策を」でした。
林敏彦同志社大学教授と稲田義久甲南大学教授が、共同で執筆されています。
日本経済の危機は、金融機関や企業部門ではなく、
勤労者の身近にあるというのがお二人の見解です。
名目賃金は、2000〜2012年の間に10%低下しており、
国際的にみれば日本の失業率は比較的低いとはいえ、
賃金はグローバル化による競争激化と
低成長のしわ寄せを最も受けていると指摘されています
危機の本質がここにあるとすれば、
緊急経済対策でも長期の成長戦略でも、官民の総需要を引き出すために、
政府の経済政策には直接労働市場に切り込む気迫と長期的視点が求められるとして、
具体的な政策手段を3つ提示されています。
第1に、
民間の技術開発、経営刷新、グローバル化、市場開拓の分野で、
高度人材を活用し、若い才能に能力を発揮してもらう以外に、持続的成長はあり得ない。
第2に、
この機会に政府部門の雇用を増やす。
公務員を巡っては天下りの横行、ぬるま湯体質、
一般の会社員に比べて優遇されているといった批判から、
財政再建のためにも人員削減が優先されてきた。
しかし、現実には震災復興、福祉社会の充実、創造的な経済政策の立案など、
喫緊の課題を抱えるすべての分野において、政府部門に高度人材が不足している。
第3に、
東京直下型大地震や南海トラフ巨大地震が起きた場合、
甚大な経済被害が予想される。首都機能のまひ状態を軽減するための対策が重要となる。
「いま求められているのは、危機便乗型の場当たり的経済政策ではなく、
国家100年の計の第一歩となる真に危機解決型の経済政策である。」
という結びとなる主張には、説得力がありました。
個人的には、次の記述が具体的で分かりやすく、大変参考になりました。
・金融緩和でテレビの価格を上昇させるとはできない。
・現時点で大胆な金融緩和策をとれば、消費者物価が上がる前に、
金融市場でケインズのいう「悲観と楽観は自らを正当化する」事態が起き、
再び資産バブルが起きると予想される。
・公共支出積み増しにより増えた所得は、
中国で生産された「ユニクロ」の衣料品や台湾で組み立てられたパソコンに向かう。
賃金上昇を伴うインフレでなければ、
デフレから脱却しても意味がないということですか…ね?