今月10日(火)の日経新聞「経済教室」は、
奥野正寛・武蔵野大学教授の『政策「先送り」今こそ脱却を』でした。
現代日本では、なぜ必要な政策の「先送り」が多発するのか?
奥野教授は、現代日本で「先送り」が目立った背景には、
二つの事情があるのではないかと指摘されています。
その前に、奥野教授は、
プロジェクトには、コスト先行型とコスト遅行型があるけれども、
わが国で先送りされてきたプロジェクトの大部分は、
コスト先行型であると説明されています。
具体的には、不良債権処理のように、
税金を使って不評にさらされるというコストが先行し、
処理が進めば経済が回復するという成果が遅れて起こるのがコスト先行型プロジェクト、
逆にコスト遅行型は、たとえば景気が悪いからといって財政出動や減税をすれば、
景気は一時的に良くなり利益が得られるが、
財政赤字は増大し、コストが遅れてやってくるもの。
そして、コスト先行型であれコスト遅行型であれ、
国民の立場から見れば、コストを上回る利益が得られるプロジェクトは実行すべきであり、
コストを下回る利益しかないプロジェクトは実行すべきではないと述べられています。
そのうえで、先ほどの二つの事情について、奥野教授の論考を整理すると、
第一の事情は、必要とされた政策変更や制度改革がコスト先行型であったという事情。
政策変更の多くは、既得権者からの強い反対というコストが先行し、
メリットは事後的にしか生じません。
第二の事情は、現代日本の政権の多くが、政権基盤が弱く、短命だったという事情。
自分の政権が短い間しか続かないと予想すれば、
コスト先行型のプロジェクトは先送りされ、
コスト遅行型のプロジェクトが採用されがちになります。
では、今回の消費税増税については、どう考えればよいのか?
奥野教授の答えは、次のように明快です。
『万一、景気腰折れというコストが先行したとしても、
増税しておけば将来の景気回復に伴って、大幅な税収増という利益があとから生まれる。
長期で考えたときに、あとから生まれる利益の方が
先行するコストを上回ることは明らかではないだろうか。』
消費税増税は「国際公約」だったはず。
「国際公約」は実行しなければ、我が国の国益を損ないますが、
これまでの実績を踏まえると、これがなかなか容易ではありません。
いろいろと示唆に富む論考でした。