『里山資本主義〜日本経済は「安心の原理」で動く』
(藻谷浩介・NHK広島取材班著:角川oneテーマ21)を読了しました。
「里山資本主義」とは、この本によると、
『お金の循環がすべてを決するという前提で構成された
「マネー資本主義」の横に、こっそりと、
お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方』で、
『お金が乏しくなっても水と燃料が手に入り続ける仕組み、
いわば安全安心のネットワークを、用意しておこうという実践』と定義されています。
やはりなんといっても、この本で一番参考になったのは、
岡山県真庭市の「木質バイオマス発電」による林業活性化への取組です。
愛媛県の林業は、スギ、ヒノキの木材価格の低迷等で厳しい経営環境にあります。
伐採の適期を迎えているのに、市場に木材を出荷しても採算に合わないのです。
林業は自動車産業と同じように裾野が広く、
地域に雇用と所得をもたらすことが可能だと思っていますが、
行政や関係団体が様々な知恵を出し合い、支援策を講じても、
なかなか地域活性化に繋がらないのが実情です。
真庭市の取組は、簡単には真似ができないと思いますが、
これからの林業が目指す、一つの方向性を示してくれています。
さて、この「里山資本主義」と対極にあるのが「マネー資本主義」と呼ばれるものです。
本の中では、久しぶりに次のような「藻谷節」を読むことができました。
『小泉改革の頃から盛隆になり始めたマネタリスト経済学は、
まだむき出しの輸入原理のままだ。
よく聞くと、「中央銀行による貨幣供給量の調整で景気は上下いかようにでも
コントロールできる」というような、
最盛期の旧ソ連においてもおいそれとは語られなかったであろう、
究極の国家計画経済が実現できるようなことを唱える輩も混ざっている。
だが、歴史に学んで今後の展開を考えれば、
日本でも早晩、何度かの痛い失敗を経てではあろうが、
米国直輸入のマネタリスト経済学がそのままでは通用しないことが
一般に自覚されるようになるだろう。』
う〜ん、どうやら藻谷さんも、
政治家の与謝野馨さんと同じく、マネタリストがお嫌いのようです。
ところで、「里山資本主義」はとても良い言葉だと思いますが、
どうしても「里山」からは「中山間地域」をイメージしてしまいます。
日本には「海岸・沿岸」もありますから、
こちらもイメージできるような言葉があったらと思います。
例えば、「里山・渚資本主義」とか…。(発想が貧困でスミマセン。)
そうそう、思い出しました。
この本の中では、「懐かしい未来」という素晴らしい言葉もありました。
「成熟の時代となり、地域ごとの豊かさや多様性に段々人々の関心が向かっている…」
「里山資本主義」が明るくて、
しかも「懐かしい未来」を運んでくれることを期待しています。
里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷浩介,NHK広島取材班
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2013/07/10
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