『昭和史1945→1989』(半藤一利著:平凡社ライブラリー)を読了しました。
集団的自衛権の行使容認の議論がこれから本格化しようとする今現在、
本書の『まとめの章 日本はこれからどうなるのか』で著者は、
極めて暗示的なことを2006年の時点で述べられています。
戦後ずっと意思統一をしてきた
「軽武装・経済第一」の分解がはじまっていて、
「このままひたすら世界平和のために献身する国際協調的な非軍事的な国家でいくか」、
「これからは平和主義の不決断と惰弱を清算して、責任ある主体たれ、
世界的に名誉ある役割を果たせる「普通の国」にならなければならない」、
この二つの選択があるとしたうえで、
今の日本に必要なのは、次の点だと忠告されています。
①無私になれるか。マジメさを取り戻せるか。
日本人皆が私を捨てて、もう一度国を新しくつくるために努力と知恵を絞ることができるか。
その覚悟を固められるか。
②小さな箱から出る勇気。
自分たちの組織だけを守るとか、組織の論理や慣習に従うとか、
小さなところで威張っているのではなく、そこから出て行く勇気があるか。
③大局的な展望能力。
ものごとを世界的に、地球規模で展開する力があるか。
そのためにも大いに勉強することが大事。
④他人様に頼らないで、世界に通用する知識や情報をもてるか。
⑤「君は功を成せ、われは大事を成す」(吉田松陰)という
悠然たる風格をもつことができるか。
そのうえで、結論として、
現在の日本に足りないのは「決して軍事力ではない」と指摘されています。
う〜ん、おそれいりました。
「昭和史」という「大著」を書かれただけに、その主張には迫力があり、説得力があります。
「昭和」という激動の時代を総括すると、このような結論になるのかもしません。
しかし、
中国の軍事的台頭、ロシアの帝国主義的行動、
さらには、アメリカの世界的なプレゼンスの低下など、最近の国際情勢を省みると、
「日本に足りないのは軍事力ではない」とは言えないのではないかと思うのです。
平和で穏やかな国であり続けるのは、
我が国の努力だけでは難しいのかもしれません。
- 作者: 半藤一利
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2009/06/11
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