20歳代の頃、好んで開高健のエッセイを読んでいました。
例えば、「風に訊け」や「完本・白いページ」などなど……。
開高さんの文章は若かった私の、心の琴線に触れるものがありました。
その開高さんの美文を紹介したコラムを、
久しぶりに今日の日経新聞「春秋」で目にしました。
『長い時が流れ、英国の名の通ったウイスキーガイドブックがサントリーの逸品を
「世界最高」に選んだというニュースが先日あった。
選ばれた「山崎シェリーカスク2013」は昨年、
欧州向けに1本100ポンド(当時のレートで約1万6千円)で3千本発売した。
嗜好品を褒めるのは難しい。
「ほとんど言葉にできない非凡さ」「極上の大胆な香り」
「豊かで厚みがあってドライで、まるでビリヤードの球のようにまろやか」。
講評には美辞が踊っている。
開高は夕暮れになるとローやん片手に
「ウイスキー用の言葉をタンポポの種子(たね)のように散らすことに従事していた」。
種子からは「人間らしくやりたいナ/トリスを飲んで/人間らしくやりたいナ」
という有名な一節も育った。
長い時が流れ、それでもこのコピーには人の心をとらえるものがある。
言葉の不思議だろうか。』
コラムに登場する「逸品」には、とうてい手が届きませんが、
サントリーの「角瓶」は、いつも私の身近にあって、その出番を待っています。
最近は、ハイボールで飲むことが多くなりましたが、
やはりウイスキーは、至福の香りを楽しみながら
ロックやストレートで飲むのが一番かもしれません。
あっ、そうそう……思いつきました。
金曜日の今夜は、「角瓶」を寝酒にしつつ、
久しぶりに本棚から開高さんの書籍を取り出して、
「人間らしい」ひと時を過ごすことにします。
今日は、本当は「休肝日」のはずなのに……。
『私はだまって酒をすする。』(完本・白いページより)