圧倒的な自然の力の前では人間は無力であること、
その無力な人間であっても希望を持ち続ければ生きていく力を備えていること、
人間が力を合わせれば不可能と思われることも可能となること、
この三つを学べた本でした。
読み終えた後、いつも付ける付箋の数が少ないのに気がつきましたが、
それほど夢中になって読んだのだと思います。
その数少ない付箋を付けた箇所というのは、例えば次のような箇所です。
『生きてみるか……と、或る日、美しい夕日の沈むのを眼にしながら、
かれはつぶやいてみた。
自分だけが生き残ったのも、神仏の御心によるものかもしれぬ、と思った。
かれは、くずれかける気持ちをふるい立たせて体力をつけることにつとめた。』
『生きながらえるためには、同じ失敗をくりかえさないことが必要であった。』
『なるようにしかならぬのだ、とかれは、念仏を唱えながら自分に言いきかせた。』
『体を動かさぬと、差しさわりが起こる。
人間というものは、働かねばならぬようにできているのだ。』
『単調な島での生活の中で、最も恐ろしいことは生きる意欲をうしなうことだった。』
『長平は、島に漂着してから自然の営みの重々しさを身にしみて感じていた。
春、夏、秋、冬が毎年定まった時期に訪れてくる。
それは、巨大な季節の環がゆっくりと回転しているかのようであった。』
いずれにしても、実際にあったことを題材に書かれているだけに、
人間の「弱さ」と「強さ」が克明に描かれた場面には胸を打たれました。
そして、この本を読んで思い出したのが、
NHKテレビテキスト100分de名著「モンテ・クリスト伯~デュマ」です。
どちらも「待つこと、そして希望すること」の大切さを教えてくれます。