景気は決して悪くないのに株価が下落することについて、
以前から不思議に思っていましたが、
昨日21日の朝日新聞デジタル版「波聞風問(はもんふうもん)」の
原真人・編集委員執筆による次の解説を読んで、ようやくその理由が理解できました。
『今月はじめの米株式市場の急落からはじまった世界同時株安。
これは悪いニュースだったが、同時にいいニュースでもあった。
急落のきっかけが米国で雇用と賃金が大きく改善した政府統計が発表されたことだったからだ。
そう聞くと、常識あるあなたにはこの出来事が理解できないのではないだろうか。
職が増え、給料が上がっているのなら景気は好調なはずだ。
ならば「株価は上昇する」のが道理である。
ところがここ数年、株式市場では非常識がまかり通っている。
景気が良くなると、「株価は下落する」のだ。原因は異常な金融政策にある。
日米欧の中央銀行はこの10年、ゼロ金利やマイナス金利、量的緩和など
前例のない規模の超緩和を次々と繰り出してきた。
市場をてこ入れし株や債券、不動産などの資産価格を下支えした。
投資家にとって空前の、きわめて心地よい環境をつくったのだ。
市場の専門家たちはこれを「ゴルディロックス(適温経済)」と呼んではやしている。
英国の有名な童話に登場する少女の名だ。
3匹のくまの家に迷い込んだ少女が、熱くも冷たくもない、
ちょうどいい熱さのスープを飲みほした。そんな物語が由来だ。
日本語訳に「適温」という表現をあてはめた市場のメッセージは
「居心地よいこの状態を長く続けて」という甘えだろう。』
う~む、なるほど‥‥。雇用の増加などによって景気が回復すると、
中央銀行は超金融緩和による大量のお金を市場から引き揚げる可能性があり、
このことを市場が敏感に反応することによって、株や債券などの価格が下落していくのですね‥。
なお、原真人・編集委員は、今の経済環境は「適温」ではなく、
はかない「ぬるま湯」ではないかと指摘されていました。
人間だけでなく経済も、「ぬるま湯」にどっぷり浸ってしまうと、
正常な感覚が麻痺してしまうのかもしれません‥‥。