NHKテレビテキストの100分de名著『ペスト』(アルベール・カミュ)を読了しました。
番組HPでは、カミュとペストについて次のような解説がありました。
『第二次大戦の只中、「異邦人」「シーシュポスの神話」等の作品で「不条理」の哲学を打ち出し
戦後の思想界に巨大な影響を与え続けた作家アルベール・カミュ (1913- 1960)。
彼が自らのレジスタンス活動で培った思想を通して、戦争や全体主義、大災害といった極限状況に、
人間はどう向き合い、どう生きていくべきかを問うた代表作が「ペスト」である。
~ (略) ~「ペスト」はナチスドイツ占領下のヨーロッパで実際に起こった出来事の隠喩だといわれる。
過酷な占領下で、横行した裏切りや密告、同胞同士の相互不信、刹那的な享楽への現実逃避、
愛するものたちとの離別等々。カミュ自身がレジスタンス活動の中で目撃した赤裸々な人間模様が
この作品には反映している。それだけではない。「罪なき人々の死」「災害や病気などの避けがたい苦難」
「この世にはびこる悪」‥‥私たちの人生は「不条理」としかいいようのない出来事に満ち溢れている。
「ペスト」は、私たちの人生そのものの隠喩でもあるのだ。
番組では、カミュが描き出そうした、人間にとって不可避な「不条理」に光を当て、
「ペスト」という作品を通して、人間は「不条理」とどう向き合い、
生きていけばよいのかを読み解いていく。』
また、テキストでの中条教授の解説で、特に印象に残ったのは次のような記述でした。
『カミュは急進的な「革命」ではなく、あくまでも人間的な尺度をもった「反抗」にこだわりました。
革命を強風に、反抗を樹液に喩えて、人間は後者によって粘り強く不条理に立ちむかうべきだと
説いたのです。たとえその反抗が基本的には敗北に終わるものだとしても、
ギリシャ神話のシーシュポスのように、山頂まで運びあげては転がり落ちる岩を
何度でもまた運びあげながら、その運命を神のものから人間自身のものに変え、
そこに幸福を見出すことさえ可能だというのです。
それは不条理との戦いにおいて、敗北や挫折や失敗が人間の条件であるとしても、
リウーやタルーやグランや、変化したあとのランベールのように、
「自分にできることをする」ことのなかにこそ、人間の希望があるということではないでしょうか。』
う~む、なるほど‥‥。
「自分にできることをする」ですか‥。そうですよね、それなら私にもできそうな‥‥。
生きていくことに希望と勇気を持たせてくれるメツセージだと思います。
そして、テレビ番組を見たなかでは、最終回に登場した「認識と記憶」という言葉と、
司会の伊集院光さんも感動されていた、カミュの次の言葉が深く胸に刻まれた次第です。
『私は正義を信じる。しかし正義より前に私の母を守るであろう』
私はこれまで一度もカミュの本を読んだことがありませんが、
今回、このテキストを読んで、ぜひ原典を読んでみたいと思いました。

アルベール・カミュ『ペスト』 2018年6月 (100分 de 名著)
- 作者: 中条省平
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2018/05/25
- メディア: ムック
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