『戦後民主主義~現代日本を創った思想と文化』(山本昭宏著:中公文庫)を読了しました。
新聞の読書欄で、精神科医・香山リカさんの書評を読んだのが、本書の購読の動機でした。
たくさん印象に残る記述があるなかで、この日記に書き残しておきたかったのは、
「終章」に書かれていた次の記述でした。
『筆者は戦後民主主義の精神が、いまほど求められている時代はないのではないかと考えている。
戦後民主主義を、たんに改憲への賛否の問題だけに限定するのは得策ではない。
戦後民主主義は、民主主義が「統治」の手段ではなく、
「参加」を通じた「自治」の手段であることを教えている。
選挙以外の場での政治的意思表示から、コミュニティや集団に関わって
より良い運営を模索する粘り強い社会的実践まで、
生活の至るところに民主主義があるという感覚が、戦後民主主義の根幹にある。
戦争体験が遠い過去になった日本社会は、
戦後民主主義の何を承継すべきなのか、あるいは何を承継すべきでないのか。
戦後民主主義のどの部分が潰えたのか、どの部分が残っているのか。
本書がそれを吟味するための一助になれば幸いである。』
著者によれば、「戦後民主主義」とは、
「日本国憲法に基づいた主権在民による民主主義、戦争放棄による平和主義、
法の下の平等を徹底しようとした思想で、
「戦前」への強い批判と反省のうえにあった。
そのため個人の政治参加の権利を重視した民主主義、
第9条が規定した戦争放棄を個人の普遍的な理念として推進しようとする。」と定義しています。
55年体制と呼ばれる政治体制が誕生した、1955年(昭和30年)に生を受けた私‥‥。
「明日は今日よりもきっと良くなる」という、「経済成長至上主義的な思考の遠因」も含めて、
私のこれまでの人生は、「戦後民主主義」と軌を一にして歩んできたのだと、
本書を読んで、強く深く自覚した次第です。
いゃあ~、とにもかくにも、実に素晴らしい本と出合うことができました。
「傷だらけの理想の軌跡」である「戦後民主主義」を知るうえで、一読をお薦めしたい一冊です‥‥。
戦後民主主義-現代日本を創った思想と文化 (中公新書 2627)
- 作者:山本 昭宏
- 発売日: 2021/01/18
- メディア: 新書