『高坂正堯~戦後日本と現実主義』(服部龍二著:中公新書)を読了しました。
文句なしにとても素晴らしい本でした。読了後の本書は、付箋だらけになっていました。
特に、終章の「最後のメッセージ~四つの遺作」は、読んでいて目頭が熱くなりました。
さて、この「高坂正堯」という著名な国際政治学者は、改めてどんな人物だったのでしょう‥‥?
終章に書かれていた、まだ30代半ばの頃のご本人の、次のような自己評価の文章が印象に残りました。
『私は日本が好きだし、日本は悪くないと思っている。
しかし、自分は愛国者であると自認することには、なんとなくためらいを感ずる。
また、私は、自分のしていることが日本のためになって欲しいと思っている。
しかし、自分は国家のために働いているのだといいたくない。
しかも、なお自ら愛国者と名乗りたくはないが、何十年か後で、
人びとが私のことを「彼は愛国者だった」といってくれたらうれしいと思うだろう。』
また、また同じく終章に書かれていた、北岡伸一さんの次のような高坂評も印象に残っています。
『その時代の肯定的な現実的な側面と、しかし超えなくてはいけない限界とを両方書かれ、
時代を代表しながら時代を超えた議論を展開された点で、戦後ほとんど例のない屈指の存在ですよ。
その意味で、明治の福沢諭吉とか、大正の吉野作造とかと、時代が違うから比較しにくいんですけど、
似たような価値をもつんじゃないかという気がする。』
これら二つの文章を読んで、私はふと、「国士無双」という四字熟語を思い起こしました。
麻雀の「国士無双」ではありません‥‥。「国に二人といないほどの才知の傑出した人物」のことです。
力作の本書を読んで、本棚にある「国際政治」(中公新書)を、もう一度読み返そうと思っています。
始めて読んだ時よりかは、はるかに理解が進むような気がします。

- 作者: 服部龍二
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