しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

権力と義務

昨日の続きです‥。


11月18日(土)の朝日新聞一面コラム「折々のことば」は、夏目漱石

「義務の附着しておらない権力というものが世の中にあろうはずがないのです。」という「ことば」で、

いつものように鷲田清一さんの、次のような解説がありました。


『権力や金力を持つ者は「相当の徳義心」をもってそれを使いこなさないといけないと、作家は言う。

 「叱る権利」を持つ教師には、叱りっぱなしではなく教える義務があり、

 富者は、金銭をどう用いれば社会にどういう影響が出るかの見識にもとづいて「所置」できなければ

 「世の中にすまない」と。札束で人心を買うような腐敗は言うまでもなく。講演「私の個人主義」から。』


ちなみに、手元にある『漱石人生論集』(講談社文芸文庫)を繙(ひもと)いてみると、

夏目漱石は「私の個人主義」の中で、次のようなことを述べています。

『‥今迄の論旨をかい摘んでみると、第一に自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、

 同時に他人の個性も尊重しなければならないという事。

 第二に自己の所有している権力を使用しようと思うならば、

 それに付随している義務というものを心得なければならないという事。

 第三に自己の金力を示そうと願うなら、それに伴う責任を重んじなければならないという事。

 つまり此三カ条に帰着するのであります。』


ところで、夏目漱石といえば、「ミチクサ先生」を執筆された、

作家の伊集院静さんが、今月24日に73歳で逝去されたとのこと‥。

毎年、成人の日には新成人に、4月1日には新社会人に向けて、

温かみのある励ましのエッセイを、サントリーウイスキーの新聞広告に寄稿されていて、

私はその洗練された文章を読むのをとても楽しみにしていました。

もうこの心の琴線に触れる文章を読めないのかと思うと、残念でなりません。ご冥福をお祈りします‥‥。