しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「官僚制の原点」を学ぶ

今日の日経新聞「経済教室」に掲載された、野口雅弘・成蹊大学教授の執筆による

『官僚制の劣化を考える(下)~政党政治の劣化こそ問題』というタイトルの論考が大変勉強になりました。


まず、野口教授は、「政治家と官僚」について、

マックス・ウェーバー「仕事(職業)としての政治」から、次のようにその相違点を整理されていました。

〇基本原則

 政治家⇒憤りと偏り(党派性・闘争・情念)

 官 僚⇒憤りも偏りもなく(非党派性・合理性・冷静さ)

〇名誉

 政治家⇒(自らの選択・決断に対して)責任を負うこと

 官 僚⇒あたかもその命令が自分自身の信念と一致するかのようにやり通すこと

〇逸脱形態

 政治家⇒党派性をあいまいにし、批判を受けないように「粛々と」振る舞う

 官 僚⇒官僚が政治的決定をする「官僚政治」


そして、この点を踏まえ、「官僚制の劣化」について次のように述べられていました。

行政改革では、以上のような政官関係が是正され、「政治主導」が強化されてきた。

 この流れは橋本行革から、「官から民へ」を掲げた小泉政権、「脱官僚宣言」を唱えた民主党政権を経て、

 安倍政権における内閣人事局の創設にまで至った。

 テクノクラート(高級官僚)の支配はいまや完全に過去のものになったといえるだろう。

 しかしながらその結果、政治家が決定し、官僚が中立的かつ効率的に行政を行う、

 というウェーバー的なモデルに現実が近づいたのかといえば、どうやらそうではなさそうである。

 官僚制の「劣化」といわれるのは、まさにこの局面にかかわっている。

 「政治主導」が進み、官僚の人事権も首相官邸が握ることで、

 本来であれば政治の圧力から自律的であるべき領域が脅かされるようになってきた。

 特に公文書、統計資料など、国民すべてに平等に開かれているはずの土台のところで疑念がもたれている。

 官僚制の「劣化」として語られているものは、

 パブリックな議論には耐えられない政治的な「横槍(よこやり)」を払いのけることができず、

 官僚制の合理性を貫徹することができなくなっている現実を指す。


さらに、論考の締めくくりとして、次のように述べられていました。

『現代の官僚制を測るモノサシは、高度経済成長期のレジェンドとして語られる官僚ではない。

 日本の現実にはそぐわない、といわれてきたウェーバー的なモデルを、モノサシとしなければならない。

 このモデルが可能になるのは、大事なことが選挙の争点にされ、

 政策をめぐる競争が「ガチ」で行われ、

 政権交代の可能性が常にそれなりにある、という緊張関係が前提になる。

 政策をめぐる競争が形式だけになり、「忖度」する以外に自己実現の道が閉ざされつつあるなかで、

 官僚の「忖度」を「劣化」呼ばわりして非難するというのでは、あまりに彼ら・彼女らが気の毒である。

 問題は官僚組織の側ではなく、競争が名ばかりになっている政党政治の側にある。』


実は、地方公務員であった私が、この論考で一番印象に残ったのは、

マックス・ウェーバーの、「あたかもその命令が自分自身の信念と一致するかのようにやり通すこと」

という箇所でした。この点では、国家公務員も地方公務員も同じたと思いますし、

これを一生涯貫けられれば、それだけで幸せな公務員人生なのだと思います。

(論考とはあまり関係のない、支離滅裂な感想となってしまいました。ゴメンナサイ‥‥)

「魔女の一撃」に苦しむ

先週の土曜日に、慣れない姿勢で庭の草むしりをしていたところ、突然ぎっくり腰になりました。

4日目となる今日になって、ようやく立ったり座ったりが、それほどの痛みもなくできるようになりました。

ぎっくり腰は、欧米ではその病態から、「魔女の一撃」とも呼ばれているそうです。


ちなみに、ぎっくり腰をネットで調べてみると、次のような解説がありました。

『その痛みの原因は、急激な運動に耐えられずに起こる腰の筋肉の肉離れや腰椎ねんざで、

 運動不足によるところが大きいといわれています。

 つまり、ぎっくり腰の予防は日常生活の姿勢と、腰の筋力強化にあるということです。』


う~む、なるほど‥‥。

日頃から猫背で姿勢が悪く、しかも運動不足気味の私は、年に数回はこのぎっくり腰に悩まされます。

その都度、「もっと身体の筋肉を鍛える必要がある」と自覚・反省する自分がいるのですが、

痛みが和らぐと、いつの間にかその自覚と反省は、どこかに飛んで行ってしまいます。

我ながら、困ったものだと思います。(トホホ‥‥)

失望と裏腹の政策

台風8号が足早に通り過ぎていきました。

こちらでは台風の影響はほとんどなく、かえって農作物には恵みの雨になったかもしれません。


さて、昨日5日の日経新聞「経済教室」に掲載された、白井さゆり・慶応義塾大学教授の執筆による

『現代貨幣理論MMTは実現可能か~国民の納得・生産性向上課題』

というタイトルの論考が勉強になりました。

まず、MMTとはどのような理論なのか、白井教授は次のように述べられていました。


MMTは需要拡大効果として歳出拡大を金融緩和よりも重視し、

 インフレ調整手段として税金が金利よりも効果的だとみなす。利下げは必ずしも需要拡大をもたらさないが、

 歳出拡大は直接的な雇用拡大により総需要を刺激できるからだ。

 政府は自国通貨(中銀当座預金)で歳出を増やし、

 債務拡大をためらわずに完全雇用と物価安定を目指すべきだと主張する。

・財源調達のための増税国債発行も必要ない。

 中銀当座預金の増加は金利を下押しするので民間投資のクラウドアウト(押し出し)も起きない。

 景気過熱で大幅なインフレになれば、増税で抑制し自国通貨を吸収(中銀当座預金を縮小)できるとの見解だ。

 自国通貨での増税はインフレ調整手段のほか、民間の自国通貨需要を高め

 その価値を維持する役割があると考える。


そして、肝心のMMTの実現可能性については、白井教授は次のように述べられていました。

MMTの実行可能性にはいくつか課題が残る。

 最大の問題は、増税は利上げ以上に国民の反発を招きやすく機動的な実行が難しいことだ。

 しかもMMTで拡充した社会保障制度を持続的に運営できると国民を納得させ消費を喚起するには、

 綿密な広報戦略が必要だ。インフレリスクが高まり社会保障給付の削減を余儀なくされれば

 社会保障制度は持続性を失うし、それを今から予想する国民がいれば消費を増やさないだろう。

・第2に人手不足の中での歳出拡大は労働者の奪い合いを激化させて、民間経済活動を萎縮させる恐れがある。

 賃金は上昇圧力を高めても、企業間競争が激化し市場の縮小・横ばいが見込まれる中で販売価格への転嫁は

 容易ではなく、企業収益が圧迫されかねない。

 しかもMMTは、低金利政策が労働生産性を下押しする副作用を軽視している。

 低金利環境では貸出金利や債券価格が企業の信用リスクを十分反映せず、

 不採算企業が温存され新陳代謝が緩慢となり、労働生産性の改善を妨げかねない。

・第3にMMTは、低金利の長期化がもたらす市場のゆがみや、

 保険・銀行などの金融機関に及ぼす副作用への考察が少ない。


う~む、なるほど‥‥。MMTはインフレ調整を、「金利」ではなく「税金」で行うことが理解できました。

でも、どうやらMMTの実現には、高いハードルがあるみたいですね‥‥。

知識不足の私にはよく分からないけれど、白井教授がご指摘のように、

「財政拡大政策への関心の高まりは、金融緩和政策への失望と裏腹‥‥」のような気がします。

郷土の偉人の記事

日経新聞電子版「スキルアップ塾」で連載中の『あの天才がなぜ転落?』は、

一度は成功者として脚光を浴びながら、転落、

富も名声も失って貧しく寂しい最期を迎えた天才たちの生涯と「失敗の本質」を分析するものです。


第1回と第2回で取り上げられたのはカリフォルニアで大農場を持ちながら、

ゴールドラッシュで転落したジョン・アウグスト・サッター。

そして、第3回と第4回で取り上げられるのは、

「再建の神様」として佐世保重工業など数多くの企業を再建させ、

資産額数千億円と言われていた坪内寿夫さんです。


今月3日に掲載された第3回目の記事では、

坪内さんが「再建の神様」と呼ばれるまでの経緯が書かれていたのですが、

そのなかでも、経営再建術についての作家・遠藤周作さんとの対談の様子が、次のように紹介されていました。


『坪内の経営再建はどのようなものだったのか。

 作家の遠藤周作との対談で、坪内は具体的な経営再建術を明かしている。

 「現状打破」と「少数精鋭」が、企業再建の根本だと坪内は語る。

 「2人でできるところを5人でやっとるでしょう。

 その場合は人が5人おるというだけで弊害の方が多い。邪魔するわけですよ」というのだ。

 これに対して遠藤は、「しかし、その少数も、仕事のできない人ではだめですね。精鋭じゃなくちゃ」

 と応じる。少数にするのはいいが、その少数が精鋭かどうかは、分からないのではないかというわけだ。

 これに対する坪内の返答に、遠藤は驚かされる。

 「それは、先生ね、少数にしたら精鋭になるんですわ」というのだ。

 この答えに、「なるほどォ。自分に責任がかかってくるから‥‥」と、感心しきりの遠藤。

 「そうそう。みんな『精鋭』ということにこだわるんですがね、

 やっぱり人間には『張り気』がありますからね、5人でやっておったのを、お前一人でやれいうたら、

 やれるんですよ」と、持論を展開する坪内は、佐世保重工業の経営再建でもこれを実施した。』


う~む、なるほど‥‥。

でも、「少数にしたら精鋭になる」というのは、どの時代の、どの組織にも通用するものなのかしら?

今なら「ブラック企業」と呼ばれるリスクがあるかもしれませんね‥‥。


ところで、坪内さんは記事に書かれているように、私の故郷、伊予郡松前町の出身です。

松前町が生んだ偉人としては、義農作兵衛(ぎのうさくべえ)が有名ですが、

そのほかにも、白石春樹・元愛媛県知事や、今回の坪内さんの名前も挙げられると思います。

(もっとも、同じ松前町出身と言っても、私が現役県庁職員の頃は、

白石さんと坪内さんのお二人は、敵対関係にありました。)


次回の第4回目は、坪内さんの転落とその失敗の理由を経営学的視点で分析するとのことですが、

どのようなことが書かれるのか、郷土の出身者だけに、今から楽しみです。

季節は確実に‥‥

連日、厳しい暑さが続いています。

ただ、今朝からセミの鳴き声に、ツクツクボーシの声が混じるようになりました。

季節は確実に、秋に向かって進んでいるようです。


入院中の父は、点滴治療も終わり、ご飯もお粥から、段階を踏んで普通食に戻りつつあるようです。

点滴治療から解放されて、精神的に余裕が出てきたのでしょうか、

今日お見舞いに行くと、病室備え付けのテレビを楽しそうに観ていました。

このまま再び元気な父に戻ってくれることを、切に願いたいと思います。