『後世への最大遺物 デンマルク国の話』(内村鑑三著:岩波文庫)を読了しました。
「解説」を含めてわずか142ページの薄い文庫本ですが、
中身がとても濃い本でした。
「後世へへの最大遺物」と「デンマルク国の話」、
それぞれ印象に残った文章は、次のようなものでした。
『〜(略)〜それならば最大遺物とは何であるか。
私が考えてみますに人間が後世に遺すことのできる、
そうしてこれは誰にも残すことのできるところの遺物で、
利益ばかりあって害のない遺物がある。
それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。
これが本当の遺物ではないかと思う。』
『〜(略)〜難いのは戦敗国の戦後の経営であります、
国運衰退のときにおける事業の発展であります。
戦いに敗れて精神に敗れない民が真に偉大なる民であります。
宗教といい信仰といい、国運隆盛のときには何の必要もないものであります。
しかしながら国に幽暗(くらき)の臨みしときに精神の光が必要になるのであります。
国の興ると亡ぶるとはこのときに定まるのであります。』
なお、本の次の「解説」を読んで、
「勇ましい高尚なる生涯」という意味の理解がさらに深まりました。
『最後にいう「勇ましい高尚なる生涯」の言葉も、
文字どおり「勇ましい高尚なる生涯」ではない。
内村鑑三が、前年公刊した「基督信徒の慰」の言葉を借りるならば
「国人」に捨てられ、「事業に失敗」し、「貧」に迫られ、
「不治の病」にかかった人々であっても、
唯一残されている可能な生き方の別名である。』
私も、内村鑑三の言葉をお借りするならば、
『アノ人はこの世の中に活きているあいだは真面目なる生涯を
送った人であるといわれるだけのことを、後世の人に遺したい』ものです。
この生き方ならば、不器用な私にもできそうな気がします。
また、「善き宗教、善き道徳、善き精神」をもつ国民がいるかぎり
国は決して亡びないこと、そのためには国民の平素の修養が必要であること。
これらは、時代が移っても変わらぬ真実であると思いました。
そして何よりも、
人生に希望をもって前向きに生きることが、
どんなに素晴らしいことなのかを教わった、とても有難い本でした。

- 作者: 内村鑑三
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/09/17
- メディア: 文庫
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