しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「二つの五輪」を考える

日差しは窓際まで届いたものの、今日は冷たく強い風が吹いて、とても寒い一日となりました。

明日はさらに寒くなるそうです‥‥。


さて、今日の愛媛新聞「文化」欄に、先崎彰容・日本大学教授が、

「コロナ禍 二つの五輪読み解く」というタイトル、「北京 解放気分味わえず 東京は精神安定剤の役割」

というサブタイトルで、次のような内容の論評を寄稿されていました。


『‥‥言うまでもなく、東京五輪はコロナ禍に翻弄される中での開催となった。

 開催は1年延期され、昨夏は感染者増の渦中での決行を余儀なくされた。

 開会式会場周辺では反対デモが起きる一方、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム

 「ブルーインパルス」が描く五輪マークを一目見ようと、携帯カメラを東京の空に向ける人もいた。

 賛否両論が渦巻く中で、筆者は五輪開催に「賛成」の立場をテレビなどで説明した。なぜか。

 理由は、この五輪が日本人の精神安定剤になると考えたからだ。

 コロナ感染拡大以降、この国のマスメディアは完全に感染者数の報道にジャックされ、

 連日、速報で数字を流すことが正しいとされた。

 筆者はこうした日常を「感染者数パワーハラスメント」と呼んで警戒を呼びかけた。

 日本という閉じられた空間の中で、しかも自分独りで部屋に閉じこもり、連日、感染者の数を連呼される。

 これはサラリーマンが上司の部屋に呼び出され閉じ込められた揚げ句、

 営業成績の数字を突き付けられるのと同じである。

 つまりメディアは日本人を精神的に追い詰め、逃げ道をなくすような報道姿勢をとっていたのである。

 ノイローゼになった会社員に気分転換を勧めるように、筆者は日本人に精神のガス抜きが必要だと考えた。

 国家全体の数字中毒を解毒するために、東京五輪ほど良いものはないだろう。

 幸い、柔道選手の大活躍を皮切りに人々は久しぶりに爽快感を受け取った。

 コロナ禍の渦中で五輪を自国開催できたことは、不幸中の幸いだったと筆者は思っている。‥‥』


う~む、なるほど‥‥。「感染者数パワーハラスメント」ですか‥。なかなかお上手な表現ですね。

先崎教授と言えば、NHKテレビテキスト、100分de名著「吉本隆明共同幻想論」で、

私たちが「操られている情報」こそ、現代最大の「共同幻想」に他ならない、

と書かれていたことを思い出します。


そして、さきほどの論評で、もう一つの北京五輪については、次のように述べられていました。

『‥‥ここからわかるのは、北京五輪の開催は、私たちを日々の政治駆け引きや国際問題から

 精神的に開放してくれないということだ。

 東京五輪にあった精神安定剤の役割、つかの間の解放の気分を味わうことが難しいのである。』


こちらも、ごもっともなご指摘だと思います。