しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

日本の役割を考える

昨日(10日)の日経新聞「経済教室」は、
国際社会における日本の役割や今後の外交を考える上で、大変勉強になりました。
いつものように、この日記をメモ代わりに使用したいと思います。

筆者の細谷雄一慶応大教授は、
今後の国際秩序を展望する中で、日本が考慮すべき点を二つ指摘されています。
『第一に、
 国際秩序がどの程度安定するかは、その秩序においてどの程度、
 価値や利益が共有されているかに大きく依拠している。
 価値が相反しながらも、多くの諸国が利益を共有していることこそが、
 アジア太平洋地域の国際関係を複雑なものにしており、
 民主主義や自由、法の支配、人権といった基本的な価値を共有する
 米国、日本、豪州などの諸国が、
 アジア太平洋地域に共通のルールや価値を定着させることができるかどうかが、
 今後のこの地域の国際秩序の焦点となる。
 TPPに日本が関与する重要性の本質は、そこにある。

『第二に、
 グローバルなパワーバランスが
 大きく変容していることに目を向ける必要がある。
 これまでは、米国の圧倒的な軍事力に守られて、
 この地域で航行自由原則や国際海洋法、そして国際経済のルールが守られてきた。
 しかしながら、「共通価値」が不在となる中で、
 米国の軍事的関与が退潮すれば、この地域の不安定化を招く可能性がある。
 長期的に考えて、
 米国が現在の水準でアジアへの軍事関与を続けることが困難だとすれば、
 そこに緩やかに「力の真空」が生まれる。』
 
そして、こうしたことへの対処は二つ。
まずは、日本自らが十分な国力を備えること。
さらに、アジア太平洋地域でルールや法の支配に基づいた国際秩序を確立すること。
日本外交に求められるのは、
国際社会において理性に基づく規律とルールが確立していく手助けをすることであり、
日本の国際的な役割はかつてよりも大きいと指摘されています。

最後に、細谷教授は、
これからの世界が混沌へ向かうのか、あるいは安定的な秩序に向かうのか、
その一つの大きな鍵となるのが、各国の世論において
理性と感情がいかに結びつくかであると述べられています。

「他国の発展に対する嫉妬」、「周辺国の軍備増強に対する不安」、
「急成長を続けることへのおごり」、こうした感情を抑制するのが理性であり、
われわれは合理的な利益の考慮や冷徹な力の計算に基づいて、
外交を組み立てていく必要があるという細谷教授の格調高い論評は、
一国民の私に、日本が国際社会において果たすべき役割について、
改めて考える機会を与えてくれました。