今月8日の日経新聞「経済教室」は、
有吉 章・一橋大学教授の「アベノミクスのリスク度合い」でした。
この論考で有吉先生は、
アベノミクスが成功するというシナリオをベースにおきつつ、
他のシナリオが現実化した場合の対応を準備しておくことが必要である、
具体的には、
ハイパーインフレーションのリスクはごく小さいが、
次のようなリスクシナリオは考えておかなければならないと指摘されています。
一つ目のリスクシナリオは、
インフレと円安が想定以上に大幅に進行した場合の「スタグフレーションシナリオ」
『円安にもかかわらず外需低迷や輸出競争力の不足から輸出が伸びなければ、
インフレという目標を達成できても経済が好転しない。
円安期待が定着して円安・インフレの悪循環が起こり、
日銀もこのスパイラルの暴走を阻止するため金融引き締めに転じる必要が出てくる。
しかし、これは国債利払いを増加させ、
利上げによる景気低迷ともあいまって債務状況を急速に悪化させる。』
二つ目のリスクシナリオは、
金融緩和と円安にもかかわらず国内物価が反応せず、
むしろ輸入原材料価格の上昇を吸収しようとしてさらに賃金の引き下げが起こり
内需の低迷が続くという「デフレ継続シナリオ」
『この場合、株価などの資産価格も一時的な上昇から反落し、
ミニ資産デフレの再現により経済も後退し、
税収も低下するなど政府債務の状況悪化が続くことになる。
これに海外需要の低調などが重なると状況はさらに厳しくなる。』
う〜ん、どちらもあり得そうなシナリオですよね。
個人的には、二つ目のリスクシナリオが、現実味がありそうな気がしています。
さらに、有吉先生の論考を読んで、危機感を持ったのが次の記述です。
『アベノミクスはデフレ脱却という点から議論されることが多いが、
その本質は、財政破綻のリスクを避けることができるかどうか、
という点にあると考えている。
財政破綻リスクが深刻な意味をもつのは、政策対応の余力がないため、
リスクの封じ込めが不可能となるからである。』
「政策対応の余力がない」という財政破綻リスク
私を含め、多くの国民は、「まさか?」と思っているでしょうね。
有吉先生によると、
「自然災害リスク」と「地政学的リスク」も財政破綻リスクを増大させるとか…。
日本はリスクのオンパレード国であることを、改めて認識した次第です。