今月1日の日経新聞「経済教室」は、「少子化対策を考える㊤」、
タイトルは「戦後の倫理・制度 大変革を」で、
執筆者は経済評論家の堺屋太一さんでした。
堺屋さんは、少子高齢化と人口減少は最も重大な長期問題であるけれども、
ちまた唱えられている対応策は月並みで、到底、根本的な解決になるとは思えず、
「戦後日本」が積み上げてきた倫理と体制と制度の塊を抜本的に変えないと、
流れを変えることはできないと指摘されています。
そして、具体的な政策としては、
まず「安心して子を産める社会」を実現することであり、
安心して産めるためには、①評判②経済③手間の
3つが改善されねばならないとして、次のように述べられています。
第1は、教育期間中の結婚や出産を社会が許容する制度を創るべきであること。
第2は、両親が一定の年齢になるまでは、育児資金を低利で貸与する制度を創設すること。
第3は、農山村に全寮制の保育所や小・中・高校を設けること。
具体的な政策を先に紹介してしまいましたが、
私は堺屋さんの今回の論考のなかで、次の箇所が一番のポイントだと思いました。
『高度成長時代に確立された人生順序は、
日本人の出生、とりわけ若年出産を阻害する方向に働いた。
だが、今や人類の文明は大きく転換した。
大型化、大量化、高速化を追求する規格大量生産の近代文明は過去のものとなった。
先進地域は多様化、情報化、省資源化を追求する
多様な知恵の時代(知価社会)に入っている。
日本はこの文明変化に乗り遅れている。
個人の家庭や人生順序までを規格化した戦後体制からの脱却を図らねばならない。』
久しぶりに「知価社会」という言葉に触れました。
私も、「個人の家庭や人生順序までを規格化した戦後体制」で育った人間の一人です。
ですから、
「教育期間中の結婚や出産を社会が許容する制度を創るべき」という発想は、
なかなか生まれてきません。
いろいろと考えさせられることの多い論考でした。