明後日、12月8日は、日米開戦からちょうど80年目の日に当たります。
今日の日経新聞「社説」には、『不合理な「日米開戦」の教訓を今に』
という見出しの記事が掲載されていました。大切な個所だと思うところを抜き出してみました。
『‥‥今となってみれば、国力に大きな隔たりがあってとても勝ち目のない戦争になぜ突入したのか
と思わざるを得ない。それを考えるとき、現在につながる日本社会の問題点が浮かびあがってくる。
かねて指摘されているのは政治の側面だ。近衛文麿、東条英機ら政治指導者の資質、
明治憲法下で権力が多元的で統一性を欠いた統治構造などの問題である。
それは制度・運用・人という組み合わせのなかで常に出てくる政治のテーマでもある。
別の補助線を引いて今につながる視点を提供しているのが牧野邦昭著「経済学者たちの日米開戦」だ。
一流の経済学者が集まった陸軍の調査研究機関による報告書の取りまとめの過程を検証。
到達した結論は、経済力は英米と日本が「20対1」で開戦後2年間は抗戦できても、
持久戦は無理というものだった。当時の指導層にもそれは自明のことだったと明かす。
ではどうして、客観的で正確な国力判断にもとづかずに、
短期的に戦えるという楽観的で冒険主義的な選択になってしまったのか。
その答えを行動経済学の知見から導き出す。
現状のままなら確実に損失が発生するとき、たとえ確率が低くても局面転換の可能性があると踏めば
リスクの高い選択をしてしまう行動パターンがここでもあらわれたとみる。
もうひとつ、社会心理学の知見によるものもある。
集団で意思決定する場合は、個人で決めるときよりも、結論が極端になる集団極性化の現象があらわれる。
リスクを冒す方向に意見がかたよっていくという指摘だ。
その背景にあったのは世論である。
新聞雑誌が対米強硬論を展開、米英戦争辞さずのムードが広がっていったとみられる。
~ (中略) ~
‥‥ネットの時代になって意思決定が極端な方向に流される傾向はさらに加速している。
極論の支配が危ういのは論をまたない。
コロナに感染する不安、社会生活への不自由と不満、行政への不信と
ネットの時代になって意思決定が極端な方向に流される傾向はさらに加速している。
極論の支配が危ういのは論をまたない。
コロナに感染する不安、社会生活への不自由と不満、行政への不信と
4つの「不」が折り重なって沈殿した現在。80年前と似たような社会心理状態になっていないだろうか。
日米開戦にいたった過程を振りかえれば、メディアの責任も改めて痛感するところだ。
自戒を込めて真珠湾80年に思いをはせたい。』
う~む、なるほど‥‥。
「日米開戦」は、行動経済学の知見と社会心理学の知見で読み解くことができるのですね。
もうひとつは、「不安」「不自由」「不満」「不信」‥‥。
この4つの「不」が折り重なって沈殿した現在、という文章表現も、
今の社会心理状態を理解するうえで勉強になりました。
日米開戦の教訓に限らず、歴史に学ぶことの大切さを、孫娘にも伝えていきたいと思っています。