一昨日の日経新聞一面コラム「春秋」は、作家の吉田健一さんと酒のお話しを引用しながら、
アルコール度数の高い酒を自粛する昨今の流れについてもコメントする内容で、
次のようなことが書かれていました。
『作家の吉田健一は毎週木曜日の昼ごろ、神田神保町のビアホールに必ず顔を出していたという。
窓ぎわの席でタンブラーを4杯、5杯と空け、
帰りがけには熱い紅茶にウイスキーのダブルを注いで飲んだ。
しかるのち、近くにあった大学で英文学の講義に臨むのである。
1960年代の話だが、これだけ飲んで教壇に立つ猛者は珍しかっただろう。
それでも周りは、まあ寛容だったのである。‥‥
‥‥日本酒やウイスキーにも、おとがめは及ぶのだろうか。
やみくもな規制に走るのも社会を息苦しくさせるに違いない。
さて、吉田先生によれば「犬が寒風をよけて日なたぼっこをしている」ような境地が
最上の酔い方だという。酒というのはやはり難しいものである。』
晩酌を毎日の習慣にする私にとって、直ぐに目に飛び込んでくるコラムでした。
そういえば、名著「私の食物誌」(中公文庫)で吉田先生は、次のようなことを書かれていました。
『‥‥その酒にも色々な種類があるから一概には言えないかも知れないが、
例えば日本酒を飲んでいる時には確かにどこかの流れの傍らで
日向ぼっこをしているのに似た味があって、これにはその上もその下もなければ
又それが終わるということもない。‥‥「酒の味その他」から。』
「犬が寒風をよけて日なたぼっこをしている」「どこか流れの傍らで日向ぼっこをしている」ですか。
この年齢になっても自分の酒量を適切に管理できない私は、まだまだ修行が足りないようです‥。
はぃ、酒というのはやはり難しい‥‥。