三浦展さんの「第四の消費」で紹介されていた
「高度成長〜日本を変えた六〇〇〇日〜」(吉川洋著:中公文庫)を読みました。
著者の吉川洋東京大学大学院教授は、日本を代表するマクロ経済学者で、
政府の経済財政諮問会議の民間議員や社会保障国民会議の座長などの要職を務められました。
吉川教授の著書ということなので、身構えて読み始めましたが、
内容は平易に書かれており、経済学の本というより現代史のイメージがあります。
特に、各章の冒頭など随所に掲載された次のような写真は、懐かしい原風景を思い起こします。
・紙芝居に見入る大勢の子どたち
→女の子は「おかっぱ」だった。
・プロレス日本選手権の力道山対木村選を街頭テレビで観戦する大衆
→中には、街路灯によじ登っている人もいる。
・ちゃぶ台を囲む三世代の家族。
→まぜご飯がおいしそう…。
・上野駅に到着した集団就職第一陣。
→皆さん、まだあどけない。
・札束を数えるボーナス景気のデパート。
→この頃は賃金が右肩上がりで、今から思うとうらやましい限り。
・安保国会デモ。
→若者が社会を変えられると信じていた…?
・完成直後の東京タワー。
→東京スカイツリーもカッコいいけど、当時の東京タワーもカッコいい。
・マスクをして登校する四日市市の子ども
→公害という漠然とした恐怖を子ども心に感じていた。
さて、吉川教授によると、
高度成長は1955年から1970年までの15年で、6000日。
1955年生まれの私は、
生まれてから中学生までがちょうど高度成長の時期に重なります。
以前にも、この日記で書きましたが、
私の世代は、もっとも高度成長の恩恵を受けた世代かもしれません。
「わずか6000日足らずの間の変化に比べれば、その後40年間に生じた変化は小さい」と
吉川教授は指摘されていますが、実感として理解できるような気がしています。
ところで、日本はこのような高度成長を再び迎えることができるのでしょうか?
答は限りなく「NO」だと思いますが、その理由は著書を読んでいただけたら……。
高度成長にはある種のノスタルジアを感じますが、
高度成長は、日本人の平均寿命が延びたという「光」の面や
水俣病に代表される公害を見過ごしてきたという「影」の面を併せ持っていたことを、
私達は後世に伝えていく責務があると思いました。
- 作者: 吉川洋
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/04/21
- メディア: 文庫
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