「日本の宿命」(佐伯啓思著:新潮新書)を読了しました。
佐伯先生が「まえがき」で述べられているように、
本書は、2012年1月に刊行された「反・幸福論」の続編です。
う〜ん、それにしても参りました。
220ページの本書を読み終えると、ポストイットだらけになっていました。
それほど、私の印象に残った箇所が多かったということです。
その中で敢えて一つを選ぶとすれば、
「第8章 福沢諭吉と近代日本の矛盾」の次の一節でしょうか。
『日本の近代化とは西洋文明の積極的摂取にある。
さもなければ日本は西洋植民地主義の餌食にされる。
しかし、西洋的文明化に成功すれば
日本はやがて西洋列強との対立を余儀なくされる。
弱肉強食の世界への参入を覚悟するほかない。
かくて「最後に訴えうるところを戦争と定め」るほかない。』
佐伯先生は、福沢諭吉を取り上げて、
本書の題名である「日本の宿命」を説明されていますが、
おそらくこの一節がその中心となる部分ではないかと私なりに理解しています。
ところで、佐伯先生は、同じ第8章の中で、
『福沢諭吉が社交を大切にしていたこと、
そして、社交を大事にするためには
「言葉を学ぶこと」、「顔色容貌を快くすること」が肝要だと
「学問のすすめ」に書かれている』と紹介されています。
ところが、佐伯先生ご自身は、
「自分は相当に非社交的な人間だ」と自己分析されています。
人とのつながりの主要な部分が「本」で、
「本」を書くことで、自己を表現し、読者とつながることができるそうです。
なるほど、このようなコミュニケーションの仕方があるのですね。
だとしたら、佐伯先生の「本」は、
これからも、どんどん世に問われていくのかもしれません。
次の「自己表現の本」が楽しみです。

- 作者: 佐伯啓思
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/01/17
- メディア: 新書
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