日本の外交・安全保障を考えるに際して、
昨日(9日)の新聞に掲載された次の二つの論考・論評が大変参考になりました。
その一つは、
日経新聞「経済教室」に掲載された
添谷芳秀・慶応義塾大学教授の
『「無極化」する国際政治〜米国の新戦略は不透明』という論考です。
論考の「要点」と思われる部分を、以下に抜き出してみます。
『 〜(略)〜「対中抑止」一辺倒の日米同盟強化論だけでは、
よりマクロな米中関係の力学の中で日本の存在が矮小(わいしょう)化されかねない。
安倍晋三 政権が推進する「価値観外交」も、
まわりを見渡せば積極的に付いてくる国は見当たらない。
そこから抜け出すひとつの確実な道は、東アジア諸国との対話と協力にある。
本稿で述べた国際政治上のジレンマや課題は、
言うまでもなく多くの東アジア諸国に共通する。
また、いかなる国でも(米国でさえも)一国でそれに対処することは不可能である。
日米同盟を基軸とする日本外交を、いかに東アジア諸国との協力関係の中に落とし込めるか。
それが、今後の日本外交をめぐる戦略的思考の原点にならなければならない。』
二つ目は、
産経新聞「正論」に掲載された
雪斎先生こと櫻田淳・東洋学園大学教授の
『「日米比同盟」の可能性を考える』という論評です。
こちらも「要点」と思われる部分を、以下に抜き出してみます。
『 〜(略)〜 目下、日本の安全保障論議に求められているのは、
「日本の安全保障は、
米国だけではなく他の米同盟諸国や友好諸国との協調によって確保されるのであり、
日本の努力は、米国だけではなく他の米同盟諸国、友好諸国の利害にも合致する」
という理解の醸成であろう。
日本の安全保障政策を専ら対米同盟の文脈で思考して済む時節は、既に過ぎた。
日本にとっては、「『自由』と『法の支配』の同盟網」の構築と運営こそ、
安全保障政策上の目標の一つとしてふさわしい。』
どちらの論考・論評も、日米同盟は大切には違いないけれども、
それだけに頼るのは危ういことを指摘しているのだと、私なりに理解しています。
雪斎先生が言われているように、国際政治において、
「自分の国は自分で守る」ことは、余程の覚悟が必要なのかもしれません。