『ぼくらの戦争なんだぜ』(高橋源一郎著:朝日新書)を読了しました。
本書では、大岡昇平の戦争小説「野火」と、向田邦子のエッセイ「ごはん」に関しての記述が、
特に印象に残りました。具体的には、次のような著者のご指摘です。
・「野火」は「彼らの戦争」について描かれていていること、
あるいは「戦争」を通じて、ついには「世界」の「外」に抜け出していった者たちの物語であること。
・「戦争」が迫っていたとき、ほとんどの人たちは自分の「日常」を手放してしまったけれども、
「ごはん」の家族は、最後まで「日常」を手放さなかったこと。
そして著者は、『ぼくは、本書のなかで、ずっと同じことを書いているのかもしれない、
それは、「日常」の中から「思想」を取り出すことだ。』と述べられたうえで、
さらに次のようなことを述べられていました。
『どんなに素晴らしい思想や考えも、「借り物」ではなんの役に立たない。ただの知識は、何の意味もない。
「たのしい知識」とは、身についた知識だ。この世の中で、ひとりで生きてゆく自分を支えてくれる知識だ。
そのためには、「根」が必要だ。がっしりと大地に根をはって、
そこから栄養を吸収してくれるような知識でなければ、ぼくたちには必要ないのだ。
そして、そんな知識を支える「根」こそ、ぼくたちの「日常」なのだ。
だとするなら、いちばん大切なのは、
ぼくたちの「日常」そのものを豊かにしてゆくことなのかもしれない。
そして、そのためにこそ、今度は逆に、「知識」も必要とされるのだ。
「知識」と「日常」は、どちらかがどちらのためにあるのではない。
お互いに、お互いを支えるべき友として存在しているのである。』
はぃ‥、引用が少々長くなりましたが、ご覧のように、
本書は、全般にわたって平易で分かりやすい文章で書かれていて、
「ぼくらの戦争」について考えるための、示唆に富む内容が盛りだくさんだったと思います‥‥。