『名著入門~日本近代文学50選』(平田オリザ著:朝日新書)を読了しました。
4週間に一度の泌尿器科病院の通院の際、郊外電車の車内と病院の待合室で、
コツコツと読み進めていたものですが、ようやく読み終えることができました。
本書は、森鴎外「舞姫」、夏目漱石「坊ちゃん」、芥川龍之介「河童」、
さらには三島由紀夫「金閣寺」など、日本近代文学50選の読み方を指南する内容です。
印象に残った著者のコメントを、いくつかの作品ごとに書き残しておきます。
親しい者の死を受け入れることは、宇宙を一周、経巡るほどに時間がかかる、
それでも私たちは他者の死を受け入れ、明日を生きていかなければならない。
人の生は、これほどにはかなく、個人では制御不能だ。それでも私たちは生きなければならない。
生きようと試みなければならない。本作には戦争の影はないと書いた。
しかし戦場に赴く多くの若者たちがこの作品を読み「生の有限性」と、
その中で生きる意味を必死に模索したことは想像に難くない。
この短編が、高校の国語教科書に載っている意味は明白だろう。
ある一定程度の才能や能力を持った思春期後期の若者にとって
「自分が何者であるか」「何者になり得るか」は大きな問題だ。誰もが、一度は、虎になる。
・「父と暮らせば」(井上ひさし)
あるいは娘を持つすべてのお父さん、そして父を持つすべての娘たちにも読んでもらいたい。
原爆というテーマを離れても、父と娘の物語としてだけでも、十分に力があり、涙する作品になっている。
まだまだたくさんありますが、これくらいにしておきます。
本書で紹介された50の名著のうち、私が読んだことがあるのは数冊にすぎません。
「一度は、虎になる」頃に、もっと名作に親しんでおくべきでした‥‥。(反省)
ついでながら、巻末の「作家索引/略歴」も役に立ちます。