しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

考える前に感じる

昨日の日経新聞電子版に、「失敗の本質」などの著者がある経営学の泰斗、

野中郁次郎・一橋大名誉教授へのインタビュー記事が掲載されていました。

そこには、次のような示唆に富む、印象深い発言がありました。


Q 企業にとって「失われた30年」の真因はどこにあったのか。

A 雇用や設備、債務もその通りだ。しかしより本質をいうならプラン(計画)、アナリシス(分析)、

  コンプライアンス(法令順守)の3つがオーバーだった。

A 数値目標の重視も行きすぎると経営の活力を損なう。

  例えば多くの企業がPDCAを大切にしているというが、社会学者の佐藤郁哉氏は最近、

  「PdCa」になったといっている。Pの計画とCの評価ばかり偏重され、

  dの実行とaの改善に手が回らないということ。同感だ。

A 行動が軽視され、本質をつかんでやりぬく『野性味』がそがれてしまった。

  野性味とは我々が生まれながらに持つ身体知だ。計画や評価が過剰になると劣化する。


Q 成功の本質とはどんなものか。

A 過去の組織、戦略、構造、文化を変える。

  そして我々はなぜここにいるかを確信できる価値と意味を問い直す。モノマネでは元も子もない。

  だから私は「考える前に感じろ」と訴えている。


Q 新型コロナウイルス禍やDX、マイナンバーで政治の世界も混乱した。国家運営での失敗の本質とは。

A 時代が要求する方向でなく、取りまとめる人々が好む方向に進んでしまう傾向が

  コロナ対応などでみられた。失敗の本質で描いた日本軍の姿と重なる。

A ベトナム戦争の当時、米国防長官を務めたロバート・マクナマラはデータ分析を駆使したが、

  数値にあらわれないベトナム人愛国心や強さを洞察することができなかった。

  独善的に戦略を立て、甚大な被害を出した。

  そのような戦略的ナルシシズムの誤りを犯さないことが国家のリーダーには求められる。


う~む‥‥。

哲学者の池田晶子さんは「悩むな、考えよ。」とおっしゃり、

経営学の野中先生は「考える前に感じろ。」とおっしゃいます。

哲学と経営学では、思考の回路が違うのかな? それとも、そもそも比較する前提が違うのかしら?

それと、「マクラマラの誤謬」は「戦略的ナルシシズム」というのは、分かりやすい表現だと思いました。

もう一つ、「Pの計画とCの評価ばかり偏重され、dの実行とaの改善に手が回らない」というのは、

私がかつて所属していた地方自治体にも当てはまるのではないかと感じました‥‥。