「日本財政 転換の指針」(井出英策著:岩波新書)を読了しました。
『財政学の伝統的な考え方として「量出制入」原則というものがある。
支出を量って収入を制する、
つまり人々のニーズをはじめに考え、
そのために求められる財源を、みんなで負担し合うという意味である。
私たちは、収入の範囲内でやり繰りすることが当たり前だと考えるが、
それでは「量入制出」であり、
財政のあるべき姿からは、むしろ後退することになる。』
著書の中のこの文章を読んで、耳が痛かったです。
地方財政は、
「量入制出」の考え方で運営している自治体がほとんどではないでしょうか?
私自身も、新採の頃には、
「入るを量って、出を制す」と、職場で教えられた記憶があります。
「税、地方交付税、国庫支出金などの歳入を見積もり、
その範囲内で歳出のメニューを考え、必要経費を積算していく。」
こうした考え方は、財政本来の姿ではないことを、本書を読んで痛感した次第です。
『人間は多様な価値観を持つ。
競争に勝つこと、利潤を手にすること、
確かにこれらは人間を構想する重要な要素である。
しかし同時に、協力すること、他者と喜びや悲しみを共有すること、
誰かのために犠牲を厭わないことも、人間の一部を形づくる要素である。
社会とは、こういった多様な人間の生の集合体として成立する。
ゆえに、複雑なものを複雑なものとして観察することでしか、
財政の未来は構想され得ない。』
この文章などを読むと、
まるで神野直彦先生の著書を読んでいるのかと錯覚してしまいそうです。
そうそう、そうでした。
神野直彦先生と著者が編者となった本に、
「希望の構想」という良書があることを思い出しました。
こちらも「志」が高く、地方自治体関係者にはお薦めの本だと思います。
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