ビデオに録画しておいたNHKEテレ「100分de名著」の最終回(第4回)を見ました。
9月の名著はハンナ・アーレントの「全体主義の起源」なのですが、
最終回は『悪は「陳腐」である』というタイトルで、
「エルサレムのアイヒマン」という、アーレントの別の著書を読み解き、
「人間にとって悪とは何か」「悪を避けるには何が必要か」といった
根源的なテーマを考える、というものでした。
最高幹部というわけではないけれど、ユダヤ人を強制収容所や絶滅収容所に移送し、
管理する部門で実務を取り仕切っていたとのことでした。
アイヒマンが陳腐だということを指摘することで、
それまで人間が「当たり前」としてきたことに一石を投じ、
思考するきっかけを作ったことだと書かれていました。
この「思考する」「考える」ことついては、
テキストには次のような解説があり、強く印象に残った次第です。
『私たちは日々、いろいろなことを考えています。
しかし、本当に「考える」ことができているのでしょうか。
実は既成観念の堂々めぐりを「無思想に」処理しているだけではないでしょうか。
例えば、インターネット上には、様々な意見や主張が飛び交っているように見えます。
検索すれば「多様な意見や考え方に触れることができる」と思うかもしれませんが、
実際には自分と同じような意見、自分が安心できるような意見ばかりを取り出して、
「やはり」「みんな」そう考えているのだ、
と安心して終わっていることが多いのではないでしょうか。
なぜそういうことになるのかというと、
一つには、そもそも異なる意見、複数の意見を受け止めるというのは、
実際は非常に難しいことだからです。
職場や学校で議論していても、基本的には人は自分が聞きたい話を聞いているだけで、
他人の話を聞いているわけではありません。
異論や反論に耐えるということに慣れていないため、聞かないことで自己防衛しているのです。
~ (略) ~
アーレントは、分かりやすい政治思想や、分かったつもりにさせる政治思想を拒絶し、
根気強く討議しつづけることの重要性を説いた政治哲学者だと思います。
「分かりやすさ」に慣れてしまうと、思考が鈍化し、
複雑な現実を複雑なまま捉えることができなくなります。
思考停止したままの政治的同調は、全体主義につながる
‥‥そのように警鐘を鳴らし続けたのです。』
う~む、なるほど‥‥。少し引用が長くなりましたが、まことにもって耳が痛くなるお話です。
また、衆議院選挙を前にして、にわかに政党や政治家の
「分かりやすい」「耳当たりのいい発言」が多くなる中で、
私たち国民にとって「心したい」お話でもあります。お互いに気をつけましょうね‥‥。(苦笑)
ハンナ・アーレント『全体主義の起原』 2017年9月 (100分 de 名著)
- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/08/25
- メディア: ムック
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ところで、話は変わりますが、今日は「えひめ国体」の開会日でした。
下の写真は、「エミフルMASAKI」の屋上駐車場から撮った、低空を飛ぶブルーインパルスです。
今回も白い煙がメインで、機体を大きく上手に撮ることができませんでした。(トホホ……)